セミナーや学習会に参加するとパワーポイントを使う説明が多くなりました。
有効なようですが、私はむしろダメではないかと思うことが多くなっています。一言で言えば「するすると入り、するすると漏れ出していく」感じなのです。
有効に見えるのは、わかりやすいこと、講師はそのために苦心されるので、講師にとっては精密さが求められるのでしょう。ところが受講者にとっては逆に定着は悪くなると思います。
まず受講者は聞きながら自分なりのノートをとることができにくいです。講師はその手間を省いているつもりかもしれません。受講者は自分なりの理解の経路ができません。
プロ野球の野村監督がスワローズ時代には選手に書かせていたものを、タイガースに移ったあと野村ノートとして要領よく説明するために選手に配りました。その苦心があだになったという話しを聞いたことがあります。これはパワーポイントと同じではないですが似たところがあります。選手や受講者が自分で書く手間が抜けるからです。
自分で書くことにより、自分なりの視点や、大事なことが思い浮かぶものです。それができづらいのです。受身型の学習スタイルであり、自分の問題意識をつくり自分のテーマにして問題に向かうスタイルを弱めます。
いいところは、図表などがあるとイメージしやすいこと、箇条書きになっていると整理されていますからもれなく伝えることができます。だから大衆的な場面では好評です。より個別的にテーマを持って探ろうとする人には思い付きが入り込めなくなります。大衆向きではあるがプロ向きではないかもしれません。
記憶に関する本を読んだところ、記憶には4つの過程があります。
「①記銘=印象を刻みこみおぼえこむ過程。②刻みこまれたものを失わないように保持する過程。③保持する印象を思い出す、意識に再生させる、想起の過程。④新たに経験したことや思い出されたものが以前に記銘されたものと同一と認める再認の過程」だそうです。
「するすると入り、するすると漏れ出していく」というのは、最初の記銘のところでわかった気にはなるけれども、本当のところは違うのでしょう。
聞きながら、見ながら自分なりのノートをとるという原始的な方法の有効性を敢えて進言します。パワーポイントが自分の問題意識づくりに効果的になる可能性はあると思いますが、まだその域に達していません。したがって外形的なカッコよさにだまされるのです。