狭い路地で転んだ女の子とその母親

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平井駅までは5、6分で、狭い路地が続きます。
昨日の午後、駅に向かって歩いていると、左手の交差する道から女の子を連れた若いお母さんが出てきました。
女の子は3、4歳でしょうか、よく動きます。お母さんが差し出す手は握らず触れる程度で横について歩きます。ある家の前が少し高くなっているのを見て、母親の手を離れてその上を歩きます。そこが行き止まりになると「待って!」とお母さんを呼び止めます。2メートルほど戻って母が見ていると、ぴょんと跳び下りました。
道に戻りますが、手は触れる程度です。突然、ばたんという感じで女の子が前のめりに倒れまして。道にはいつくばる格好です。
「あー、痛いねー、だいじょうぶ?」というのが母の第一声。痛かったねー、と言いながら子どもが立ち上がるのを待ちます。「痛かったね―、だいじょうぶ」と繰り返される母親の言葉に、女の子はようやく「痛くない」と、ちょっと強がりに答えました。何よりも泣かなかったですね。お母さんは手を出さずに立ち上がるのを待っています。
そしてまた並んで歩き、少し進んだところで別れました。人通りの多い道路では、母親もこうはできなかったかもしれません。私はちょうど通りすがりで横をゆっくり歩いていました。
子どもが転んだ時の母の第一声がよかったし、母親ならではのものです。「しっかり手をつかんでいないからでしょ」的なものではないのがいいのです。この時期の愛情のある子育てのいい実例を即席の短い時間のなかで見せてもらいました。
ずいぶん昔のことですが、赤ちゃんのオムツを替えている時、急にウンチをしたことがあります。その時の母親の驚きのことばは「あー、いっぱい出た、よかったねー」でした。母親らしい子どもの身になって出てくる言葉です。あの時の情景を思い出しました。

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