子育て・家事に関する自治体の情報の図表

ー20点の図表と松田メモ(会報『ひきこもり居場所だより』2025年2月号)

1-1 夫と妻の平均家事時間― 新潟県柏崎市
1-2 子持ちの夫婦の家事・育児関連時間の推移― 栃木県日光市
《松田メモ:育児と家事が扱われるようになりました。この2つの面を総合的に見ると夫と妻の間で大きな差になっていること、分業としてはどうなるのかが考えどころです。》

1-3 子育てを楽しく― 新潟県柏崎市  

《松田メモ:とくに夫に子育てへの参加を勧める意志がこの報告に表われています。》

1-4 育児・家事は誰の役目― 鹿児島県薩摩川内市
《松田メモ:若い世代ほど「育児・家事」に夫と妻の役割を同じにする意識が高まっています。40代と50代の間、1970年代生まれの人の前後で大きな段差が感じられます。「それでも不十分」と思う人がいるとしても…。》

1-5 男性の家事・育児の参加― 北海道岩見沢市
《松田メモ:男女差と世代差を見る視点―両者の差が少ないのは、職場の理解が大事なのに、そこが問題になること。両者の違いが大きいのは、男性自身の抵抗感(意識)ではないか。》

2-1 子育ての負担― 新潟県柏崎市
《松田メモ:4つの面から負担を見ています。出費・時間・精神的疲れ・身体的疲れ。》

2-2 子育ての負担、核家族化と子育て世帯― 新潟県長岡市
《松田メモ:2018年から2023年という5年間に、長岡市では核家族化は15%も増加し、70%の世代が核家族になりました。全国的にもこの傾向があると思います。それが家族内ケアの力を減らしているのです。》

2-3 男性の育児参加に必要なこと― 鹿児島県薩摩川内市
《松田メモ:女性の変化が少ないのは、ほぼ上限レベルにあり、これ以上にはならないでしょう。男性も全体として増えていますが、18~29歳ではさらに女性の状態に近づいてます。》

2-4 「男は仕事、女は家庭」の意識調査― 大分県豊後高田市
《松田メモ:2018年から2023年の5年間という比較的短い期間ですが、「男は仕事、女は家庭」という考え方に「同感しない」人が、少しずつ増えました。「同感しない」がついに60%を超えました。1つの自治体のことではなく、全国的なものと感じます。》

3―1 育児休業取得率― 静岡県島田市
《松田メモ:2018年から2023年の間に、男性の育児休業取得率が10%以上急増し、30%を超えました。これはコロナ禍という事情と政府・自治体の働きかけがあったものと思います。それでも男女差はまだ大きい。》

3―2 育児休業給付金などー 新潟県柏崎市
《松田メモ:育児休業給付金等は、国の制度としてだけではなく、人口減対策、産業振興策などとして、自治体でもそれぞれ取り組まれていることの一端が示されています。》

3―3 育児休業取得期間― 埼玉県桶川市
3―4 育児休業を取得しない理由― 福岡県田川市
3―5 育児休業を取得しなかった理由― 静岡県島田市
3―6 育児休業ハラスメントー 静岡県島田市
《松田メモ:育児休業取得をすすめるために、その障害になっていることが何なのかを示しています。社会全体の問題として取り組むようにその要因をいくつかの点から示しているものです。》

4-1 1日の生活時間― 福井県
《松田メモ:4-1,4-2,4-3は家事・育児が社会生活全体のなかでどのようになっているのかを示した3つの表です。》
4-2 買い物便利度― 栃木県那須烏山市
《松田メモ:家族構成員数と買い物便利度が関係することを示します。》
4-3 消費構造の変化 ― 総務省

◎データ表示の図示を載せた会報(2月号)を配布します。送料含む切手200円分とともに申し込んでください。 
⇒不登校情報センター 
東京都江戸川区平井3-10-4(〒132-0035) 松田武己

家族内ケアが家族の世代継承機能の中心(その1)

不登校情報センターの会報『ひきこもり周辺だより』2月号を発行しました。内容は異例のものです。内容はただ「子育て・家事に関する自治体の情報を紹介」だけです。
いくつかの自治体の取り組みを上げましたが、広報紙に図表のあるものを挙げました。その意味することを1ページ書きましたので今日はそれを載せます。
どういう図表なのかは明日紹介しますが、図表を載せられませんので、タイトルとそれについての「松田メモ」です。
今回の「子育て・家事に関する自治体の情報を紹介」は、より本格的な論文の先ぶれになるもので《家族内ケアが家族の世代継承機能の中心(その1)》にあたります。

《私は長い間、ひきこもり経験者に囲まれた生活をしてきました。初めのうちは家族・親族のかかわりに注目し、彼ら彼女らの対人関係の居場所づくりや精神心理的な面から改善を考えました。数年前からひきこもりが社会に多く現われた時代の経済社会的な状態から考えてみました。これにより「ひきこもり」をそれまでとは違う説明ができます。その文章化もかなり進めています未完成です。
1960年代以降の高度経済成長期には産業分野だけではなく、家族状態にも大きな変化が始まりました。家族の持つ役割は多くありますが、この変化のなかで世代継承機能が低下しており、それによる困難が社会の各方面に出ています。他方ではそれを回復する動きも静かに生まれつつあります。
この過程の説明から始めたのですが、読者にはおもしろくもなく身近に感じないと予想できます ⁉ たとえば家族生活を維持する家事には日常の衣食住に関することと家族内ケア(子育てや介護など)の2つの部分があります。家族内ケアが家族の世代継承機能の中心になります。それにしても家事と一般の労働がなぜ同じに扱われないのか、家事労働を評価する動きはないのか…など。
この事情が家族の変化、核家族化の進行など社会全体の変化を説明します。それが社会的ひきこもりの多くの発生と結びつきます。詳しく説明しないとわかりづらいのですが、私には発見であっても、一般にはピンとこないかもしれません。
その説明を後回しにして、身近に感じる家事分担の男女差、育児休業など多くの自治体が取り組みをまとめたのが今回です。自治体の広報紙はグラフで見やすくしています。それらをアットランダムに集めてみました(介護の取り組みには手が届かず)。このあたりを話し合いの材料にできると思ったわけです。》

入所型介護施設にて

介護士さんに車イスを押されて、私のいる机にQおばあちゃん(92歳?)がやってきました。膝と腰がわるくて立ち歩きできないといいます。介護士さんが離れたあと少しして、あそこで横になりたいといいます。すぐ横の大型テレビの前にソファがあり、そこに行きたいのです。職員の介護士さんにお願いしても「逃げてしまうんです」とのこと。ソファには数人座れ、テレビの前なので一人がそこで横になるのは止められているのでしょう。
これは私の推測であり、他にも理由があるのかもしれません。だから私がQさんをソファに座らせるわけにはいかないのです。やむなくテレビの前の机までQさんの車イスを移動させました。わずか2メートルです。これじゃ形ばかりかなと内心思っていたのですが、「やさしいね~」とQさん。そして「職員はいつも逃げていくんです」とくり返します。
以前に介護施設の職員は「入所者の“わがまま”に振り回されるくらいの方がいい」というあるベテラン介護施設責任者の話をきいたことがあります。職員は大変でしょうが、入所者の細ごまとした要求を逃げていてはいい介護施設にはならないのでしょう。この話を思い出しながら、さてQさんにこれをどう説明すればよいのか? …名案はありません。
「自宅に戻りたいですか?」とQさんに問いました。答えにとまどった様子を見せます。「できればそうしたいですけど、そうすると私一人がいる時間が多くなって、何もできなくなるでしょう。——だからここに入れてもらったんです」と、ゆっくりと話してくれました。
自宅に介護職員に訪問してもらう——Qさんには直接聞いたわけではありませんが、私の自宅近くに訪問看護ステーションが2か所あります——訪問介護はいいことですが、基本的に全時間いてもらうことはできません。
通所型=介護施設に1日から数日入所する、1日のなかの短時間通う(迎えに来てもらう)——朝の8~10時ころ、この地域内で介護施設の車が停車しているのを見かけるのはこのタイプです。これも社会的介護の一部であり、家庭介護を補助する方法です。それでも満足できるほどにはいかないと予測できます。
結局は、自宅で全時間、介護できる人がいる状態が、いちばんいいのです。そのためには、自宅に介護を交代できる多くの手があることが求められます。その交代できる手の数が少なく、子ども(孫世代など)に長時間お願いしているのがヤングケアラーになると思います。
これは高齢の身体が動き難い人ばかりではなく、子どもや成人期の人であっても身体障害者などへの介護(ときには看護)においても当てはまります。
ひきこもり経験者の集まる居場所に来ていた人のなかには、この自宅介護・看護に携わっていた人がいたのは、このような社会的背景があるのです。介護施設でのQさんの例はそれを教えてくれました。
自宅において介護の手が増え、外からの専門的な介護・医療も手が差し伸べられるーこれが理想形に近いと思うのですが、さてそうなるための条件は?

銭湯は公衆衛生・健康維持の場です

昨年末に江戸川区生活者ネットワークのはがきアンケート調査があり、銭湯が減っているので対策が必要ではないかと回答しました。しばらくして同ネットワークの区議から連絡があり、調査し対応を求めたいという話が返ってきました。

思うにこれは銭湯の経営(後継者を含む)の問題であるとともに、住民の公衆衛生、健康にかかわることです。知人で生活保護を受給する人がいて、聞くと銭湯はめったに行かず、自宅で温水で体をふくことが多いといいます。

東京都の公衆浴場(銭湯)の入浴料は大人540円、子ども半額です。江戸川区では高齢者に区が半額補助しています。この点を考えると、銭湯経営への資金補助よりも利用者(区民)の銭湯利用を増やしていく対応策がいいのではないかと思います。それが住民の公衆衛生に役立ちしかも銭湯経営にも役立つからです。そのために、銭湯利用時の補助対象者を広げる——例えば子ども料金を無料にする、区民全員を無料にする、というのが一方法になります。

中間的対応として、補助費を増額——たとえば400円とか450円にする、という方法もあると考えます。銭湯経営者の意見を聞いたうえで、区議会各派と協議して、対応提案する方法があると思います。子ども食堂につづいて「子ども銭湯」なる、子ども銭湯無料日を月1回は設けるなどもアピールしやすいと思いました。自宅にバスのある人も銭湯無料である日、自宅の光熱費も下がり、銭湯をコミュニケーションの場として活用する方向も広がると思います。

タワーマンションの増加に思うこと


JR総武線平井駅北口に100メートルを超えるタワービルHirai Terraceができました。店舗の入居を待って間もなくオープンするでしょう。私が注目しているのは自転車の駐輪場が用意されているかどうかです。居住者は駅まで徒歩で1分以内ですが、このタワービル内の商業施設には自転車利用者が多くなると思えるからです。

23区内有数の田舎風ともいえる平井駅周辺ですが、こんな都市開発でいいのかという懸念もあります。主要都市中心に全国各地でタワーマンション(タワマン)ができています。100メートルを超えるものだけでも数百棟になるのではないでしょうか? 聞くところでは神戸市はこれ以上のタワマン建設を許可しないという宣言をしたとか。何となくわかる気持ちがしました。

年末12月29日の東京新聞(朝刊)はタワマンをめぐる様子を扱っています。取り上げられたのは総武横須賀線と南武線が交差する武蔵小杉駅周辺のタワマン街です。小杉町3丁目にはタワマンが3棟建ちました。古くからの住民はこの再開発で転出し、町会参加者は減少し、町会は解散しました。人口はこの20年間で2.5倍になっているので、町会に代わりエリマネ(一般社団法人武蔵小杉エリアマネジメント)ができ、現代風になりました。しかしこのエリマネも存亡の危機にあるといいます。会員は約70人で、「災害時の共助」などは代替しにくいというのです。住民は増加し、40代など若い世代が中心になっていても…私には「住民の結びつき」ができにくいためではないかと思います。町会とエリマネの役員を経験した人が「タワマンの住民は40代が多い。30年たてば70代。…この町はどうなってしまうのか」という声を伝えています。

新住民の子ども世代のところで住民のつながりができ、地域は復活するかもしれません。しかし、その保障はとくにありません。ここは日本人が本来もっている何かが生かされ、公助ともいうべき自治体の施策が生きてくるのを待つ…に頼るだけでは、希望が持てない気がするのです。実は私が知る人もここに近い地域のタワマンに住んでいます。その人のことをふと思い出しました。

「農薬を使う農業生産者は自作の農作物を食べない」ときいたことがあります。「タワマンを建設する建設業者はタワマンに住みたくない」というのも聞いたこともあります。生産者はその生産物の見えない部分が見えているからでしょうか。

土地利用として平屋がいいとは一概にはいえません。山岳地形が多く平地の少ない日本では、地上の空間を有効利用する技術と知識はあります。しかし、技術と知識だけで世界はできているわけではない…と思います。タワマンの状態を考えることは、「地縁的で親和的な団体」を遠回りの対極側から考える機会になりました。

総武線車内で出会ったカメルーン人

高田馬場から平井に戻るため、新宿で総武線に乗り換えました。電車は混んでいましたが信濃町で前に座っていた男女が席を立ち空席になりました。私の横に黒人が座り、彼も新宿から乗ってきたようです。
席に落ち着いてから左隣の彼に「どの国から来ました?」と聞くと「カメルーンから」と慣れた日本語で返してくれました。頭の中に地図を広げて、「ヤウンデよりもドゥアラの方が発展していますね」と聞いてみました。地理学上の話でどう答えるかはその人の社会への関心がうかがえるものです。「そうです、ドゥアラが発展しています」と答えます。「チャド湖の乾燥はすすんでいますか?」ときくと「砂漠化が続いているんです」。「フラニ族はカメルーンにもいますか?」。サハラ砂漠南側の西アフリカに広がる牛を遊牧する人でプール族ともいいます。「日本の牛とは違い、歩きつづけるので牛はやせていて、牛肉はかたいですよ」。よく知っていますし、私の知るよしもない事情も伝えてくれます。
話を変えました。「10年くらい前ですか、ナイジェリアとの国境を平和的に作定しましたよね」。私はこの地域をニジェール川デルタ地域の一部と思っていたのですが、そうではなかったようで、「~地域ですね」と答えました。この地名を私はうまく聞きとれませんでしたが、ニジェール川デルタ地域ではないことを正確に理解しています。かれは祖国の事情を相当に理解していると見ました。
「カメルーンは平和ですか?」ときくと、現在の大統領は40年以上大統領だといいます。周辺地域の中央アフリカ、チャド、ガボンなどを含めて旧フランス植民地は、「紙の上では独立していますが、いまも植民地です」と答えました。「西アフリカではいくつかの国で紛争が起きていますね」。⇒「フランス植民地状態から抜け出るため、マリ、ブルキナ・ファソ、ニジェールでは民族主義的な動きが出ています」。「西アフリカ経済共同体はどうですか?」。⇒「西欧の下請けですよ」。「UA(アフリカ連合)をどう思いますか?」。⇒「期待できません。ガタフィはがんばっていましたが、西側に暗殺されました」。聞き違いではなくて彼はガタフィと何回か発言しました(カタフィではなく)。
もう少し突込んでみました。「ウクライナ戦争をどう思いますか?」⇒「プーチンは勝つでしょう」。「ウクライナや西側は敗北すると?」⇒「アメリカは世界に800以上の軍事基地をもっているので、そのうち落ちていくでしょう」。「私はロシアと中国は体制が崩れると思っていますので、あなたとは意見が違うようですね。日本はどうですか?」。⇒「30年ほど前に日本に来ました。日本はずっと低迷しています。アメリカもドイツもそのうち停滞していくと思いますよ」。「日本で30年、日本でどんなことをされていますか?」⇒「いまは病人などを運ぶ車のドライバーをしています」。「日本はお世話になっているようですね。カメルーンに戻る予定は?」。⇒「大統領は80歳を超えているのでいずれ亡くなります。そのころ私が帰る意味があるかどうかわかりませんね」。
平井駅が近づき、私は下車の準備は始めました。彼は次の新小岩まで行きます。右手を差し出してきました。肉厚の大きな手で、私の手はそれに比べると子どもの手みたいです。彼の手をみて、2022年春に駐日モザンビク大使と握手した手を思い出しました。同じバンツー系黒人男性の大きな手です。モザンビクは国益を守る立場からウクライナ、ロシア両国と国交を続ける中立、グローバルサウスの代表例です。カメルーンの彼は、やはりグローバルサウスに属するがロシア寄りといえるでしょう。
平井駅で降りる前に「カメルーン人民同盟を知っていますか」と聞いてみました。「知っています」との答え。モザンビクではモザンビク解放戦線は政権についています。カメルーン人民同盟は左派野党ですが両国とも選挙制度が機能していますので、野党も合法的に活動しています。彼はカメルーン人民同盟に近いと思いますが、ロシア寄りということでしょう。
車中での30分に届かない時間で、要点だけを書きましたがいい話ができました。日本に留学してきて(?)以来30年ほど住み続けていますが、日本での経験を生かし、祖国のために活動してほしいと思いました。(2024年12月21日のことです)

自治体福祉窓口への相談を勧めます

Ntくんは40代に入ったひきこもり経験者です。居住する自治体やその業務委託受けている福祉団体や居場所に積極的に相談に行ってきました。しかし話が進むと衝突し、なかには出入り禁止になっているところもあります。
彼の詳しい説明を聞くと、自治体というのは、それが設けている制度の枠内でしか対応せず、彼が必要としている条件については全く受け入れようとしない——これは私の要約した表現ですが——話が進むなかでそこが明らかになり衝突するようです。
彼の詳しい説明をきくなかで私は自治体の対応の多くがそのようになっている実情を知りました。そうであっても私は、私に電話などで相談をしてくる人には自治体の福祉課や教育相談所や保健所やあるいは社会福祉協議会に相談に行くように勧めています。
その意味はそれによってその自治体が対応している条件の改善が図られる可能性がでること、それにより自治体職員に当事者の要望(むしろ当事者のおかれている状態)を伝えられると考えられるからです。このような相談の場では、多くの人が自治体各セクションの対応の不十分さを実感し、なかにはウツ状態になる人もいました。
首都圏のある市の福祉課窓口にOsくんと一緒に行きました。窓口で私は彼の横に座ったのですが、彼は落ちつかず、十分近くなると立ち歩きしばらくして戻ってきます。これは彼のそのときの症状です。しかし窓口の担当者は私が前に座って話しているので席を外さず対応できる内容などを話してくれます。やがて就労支援課の人が加わり、さらに医療につながる人も交代でやってきました。
結局Osくんはその相談の直後に市立病院を受診し、入院することになりました。一人暮らしであり職に就いていない事情もあり、生活保護を受給することになりました。Osくんは行政窓口で「たらい回し」にされることなく、この状態になりました。この自治体の福祉課窓口はワンストップサービスを提供していたともいえるわけです。この市の窓口はそうしていると思います。
Ikさんはある精神科医院に通院しています。主症状は不眠であり、睡眠剤の処方を受けています。それだけで状態が改善するわけはなくいろいろな相談機関に行き、医療系の講演会に出席し、居場所をのぞいたりするなど本人なりの試みを続けています。しばらく前から保健所に相談に行っています。保健師とカウンセラーが対応しているといいます。
私が自治体に相談に行くように勧めるのはここにも理由があります。福祉課には職員がおり行政職として「その自治体で可能な福祉制度と周辺の対応方法」を案内してくれます。それが相談員の役割です。しかしそれに加えて心理カウンセラーが配属される場合が増えてきました。心理カウンセラーは行政職とは違った視点で、相談者の状態や望むものを引き出そうとすることが多いのです。そのなかには行政的な対応方法のないものも含まれますが、それを引き出すことは私にはその相談者(クライエント)にとっても意味のあることです。Ikさんにとっては少し条件がよくなったと思えます。

数年前からある自治体福祉課が「断らない相談支援」を掲げるようになりました。福祉課はこれまでにできていない施策を受け入れられませんが、相談者の要望をきく、それがどうすれば実現できるのかを考える機会になる——文字通り「断らない相談支援」を受けとめればそういうものになるでしょう。
相談しても一歩も前に進まないこともあると思います。当事者が自分の抱える問題を自治体窓口に行き「必ず何とかする姿勢」が示されれば、わずかずつ動かせると思えます。自治体のいくつかは「8050問題」の改善・解決を目標にしています。障害者支援が出発であったと思いますが、地域共生社会にとりくんでいますし、重層的支援体制として複数の部門の複数の事象を組み合わせて対応する試みもみられます。
全体からみればこれらはまだ端緒的でしょうが、この試みは全国各地の自治体に表われています。私はこれらの理由から自治体の福祉課をはじめとするセクションに相談に行くように勧めてきました。
可能なときは相談に同行し、窓口に同席します。自治体の窓口以外に医療機関の診察の場、教育機関の入学相談の場、サポートステーションやハローワークの相談の場などにも同行・同席してきました。世の中(制度、施策やその前提となる人たちの感覚)は大きくは変わりません。小さな、個人的な苦心の積み重ねが大事だと思うからです。