引きこもり状態から抜け出す道-その3「手紙でつながる」

大人の引きこもりを考える教室の場で、引きこもりから抜け出す方法として手紙作戦を紹介しました。さしあたり該当者は現われませんでしたが、有効な方法と思います。
いずれもすでにサイト内に設定・記載していることですが、それをまとめてみるとこうなります。

(1)親を通して日記・手紙などで意見交流をすすめる
〔質問〕家から出られなかった引きこもりの子が外出できるようになった実例を教えてください。
〔お答え=木村茂司〕親、ほとんどが母親ですが、続けて相談に来てもらいます。相談をし、いろんな話をします。
本人の性格、行動、生育と親や兄弟との関係、家庭環境、学校についてなど。
この中で、親がよく把握していない場合もあります。わが子について、詳しく伝えられない場合もあります。
その時は、日記を書いてもらったり、いろいろとレポートのようにまとめてもらったりもします。これは、改めて親がわが子に向き合う1つの形でもあります。
こうした中で、ある時期に、私から本人に手紙を書いたり、マンガの本を貸したり、知恵の輪をもっていってもらったりします。
手紙の内容は、慎重に考えます。本人が見てくれないと何にもなりませんので、本人が興味や関心のあることを書きます。少しずつ少しずつ気をつかって書きます。それに対して母親に感謝や質問をしてくるようになれば成功です。
本人から返事の手紙が来ることもあります。
本人が読んでくれそうなマンガをもっていってもらったりもします。クレヨンしんちゃんであったり、ブラックジャックであったりいろいろです。読んでくれたり、注目が出てきたら成功です。
そうしている内に、中・高校生であれば勉強の問題を出します。その先には、進路について話します。そうしていると、マンガ本を選ぶためとか、いろいろのきっかけで私の所に来たりするようになります。
はじめに外出ねらいでなく、安心、信頼がもてるように母親を介して接触します。安心、信頼できる人を母親がみつけてきてくれた、となると本人と母親の間にも安心、信頼ができます。母親と私との間で、安心、信頼ができないと何も進みません。
こうした具体的な取り組みをすれば、だいたい何とかなります。中学生でも、高校生でも、大学生でも、だいたいこうした取り組みで進みはじめます。

(2)〔メール相談受付〕事情をメールで詳しく書いて送ってください。手紙に書いていただいてもいいです。回答は有料で1件1000円(切手代金を含む)。
http://www.futoko.info/postmail/postmail.html
回答者は次の3名です。

(2-1)二条淳也
「高齢ひきこもり」というブログを運営しています二条淳也です。
私自身、十年近くひきこもっていましたが、最近、動き始め、徐々に働き始めています。
ひきこもっているあいだ、私は「死ぬまで働かない」と親に断言していました。
遺書めいた手紙を親に送ったりしていました。ところがいま、私は少しだけ働いています。
年齢に関係なく、ひきこもりの方たちには「動き出す可能性」があると思っています。親子関係や労働現場での出来事など、自分の体験に基づいて相談に対応するつもりです。
私のブログをご覧になり、「意見を聞くに価する」と思われましたら、ご相談下さい。誠実にお返事します。

(2-2)島田邦子
(1972年9月19日生まれ富山県出身)
幼少の頃より姉妹の中でも感受性がつよく、小学校ではいじめを経験(拒食症になる)、大学に入学以降、本人でもわからない症状(対人恐怖、過食&拒食症、リストカットなど)で引きこもりと社会復帰への挑戦を繰り返す。
仕事を常に探して社会復帰がテーマの人生を送る中、専門学校にも行って手に職をつけるが、その後7年間のうつ病を患い、点滴と通院、カウンセリングの日々を送る。
闘病のために増え続ける薬の副作用から、ついには心身がもたなくなり、医師には止められながらも自らの力で薬を一切止める。
その後は、自分で自身を治すためにカラーセラピーを始め、メイクアップの勉強、資格をとり、自宅サロン(自由が丘) で心身をご自身の力で元気にさせていく「パシュパラ」の開業現在に至る。

(2-3)松田武己
相談を受けた件数は数百件か千件を超えるでしょう。しかし、相談の受け答えをするだけでは求められる解決・改善には届いたかどうかは確認できません。
居場所づくり、自宅訪問を実行しているのは相談の枠を超えたことが必要と考えたからです。
手紙相談では子どもが実際に何かの動きに移せるのを確認する機会は限られるので、できれば数か月から1年後の様子を知らせてください。訪問になる、居場所に出かけられる、親が親の会に参加するのも一つの前進です。

手紙活動の参加問い合わせが2人から来ました

文通ボランティアへの参加問い合わせが2人から来ました。
これからは必ずしも「文通ボランティア」ではないので、「引きこもりへの手紙活動」参加者とします。
1人はお母さん、もう1人はかつての不登校・引きこもり経験者のようです。
メールによる問い合わせなので、お名前も住所もわかりません。共通して次のようにお返ししました。

「ご連絡ありがとうございます。所定の申込用紙を郵送させていただきます。
ご住所とお名前をお知らせください。
それにご記入し参加してください。記入はできるだけ直筆で詳しく書いてください。文は人なり、といいますが、文字も人なりです。直筆は感情が自然にこめられるもので、そこが活字とは違います」
*直筆で書くことは絶対条件ではありません。パソコンもOKです。
*要領は詳しすぎてわかりづらいのですが「手紙でつながる引きこもり対応」見てください。

引きこもりと「手紙でつながる」方法を考えました

大人の引きこもりを考える教室(13日)では、引きこもっているのが女性という人が4人いました。状態はさまざまですが、「手紙でつながる」方法を具体的に考えるのには有効だったと思います。
ある人から「(娘さんから見て)祖母からの手紙を開けようともしない」という話がありました。これは以前に祖母からもらった手紙にどうすべきなのか指示的なことが書いてあったと推測します。
それはできそうもないことの説教に過ぎず、引きこもっている人は聞きたくはないのです。これは手紙でつながる方法ではありません。そういう指示や指導をする人は引きこもり当事者の置かれた状態を理解しようとはしないからです。引きこもり当事者のそのあたりの感覚はきわめて的確です。
手紙に限らずそういう人が来るのには拒否反応を示します。私はそれを引きこもり当事者にとってきわめて正当な判断と対応になると考えます。
そしてこの状態を超える「手紙でつながる」方法をどう実現するのか、これは私にはまだわからない分野です。まず手紙を書こうとする人がどういう人であり、どういうスタンスで手紙を書こうとしているのかを示します。それを見て判断してもらいます。その実践のなかでわかりたいと思います。そういう手紙を見てもらう、読んでもらうだけでも何かを越えなくてはなりません。実際の取り組みがその不明なものを少しずつ明らかにしてくれるでしょう。

今回の教室では数人の当事者が遅れてきました。部屋の使い方と椅子の並べ方によってこの教室に入ることができませんでした。私の準備不足・配慮不足でした。終了後に私の予定ですぐに外出し、後はお任せしましたが…。

手紙のやり取りの目的は引きこもりの本人・家族とつながること

「手紙でつながる」新企画に質問がありました。やり取りをする手紙を「手紙チーム」が内容を読む意図はどこにあるのかという趣旨です。
内容がアドバイスになっているのかどうかです。説得する、誘導するようなアドバイスでは、引きこもり当事者との交流が始まらない、始まる前に終わってしまう可能性を強く感じるからです。そこに留意したいのです。
手紙の内容はその人の経験や個人的な性格などが表現されて当然です。それがなければ典型的な回答例をつくり、配布をすれば事足ります。それでは感情的な共感は生まれません。つながるのは個人と個人です。理論のやり取りではなく経験に基づく感情的な交流です。
これはいくつかの経験に基づきます。
当事者のネット相談コーナーを作り、数件の相談事例がありました。ここで生まれた相談は親からのものであり当事者からのものではありません。
ネット上の相談に当事者がネットと通して答えました。このとき私は仲介として問い合わせもそれへの回答も転送の前に読みました。読んでもまったく支障がなかったのです。
回答した当事者は2名ですが、いずれも私と面識があり回答内容には事前に安心感がありました。いや、実際の回答は私の予測を超えて的確であり、丁寧であり、なによりも自分の経験に基づくものでした。問い合わせてこられた方への自然な共感がありました。
今回の企画は手紙で答えようとする人を広げます。そうしないと取り組みが広がりません。私の知る範囲でさえ多数いる引きこもり状態の人との接点ができません。そこではいろいろなタイプの人の参加を必要としています。善意でありながら指導する人もいるかもしれません。
大事なことは手紙を書く人も書きながら理解し、自分にとって有益なものできることです。以前に取り組んだ『ひきコミ』文通はそれができませんでした。参加者は800名近くいたのですが、何が起こったのかはよくわからないままです。始めてから10年後に状況をアンケートで調べもしました。60人余りの方から回答をいただき、そのうち文通をしていたのは37名です。文通を伸ばしていくには“何かがたりなかった”のです。そのたりなかった何かを、親しくしていた名古屋の木村茂司さんの手紙を生かして引きこもりの人とつながる取り組みに教えられました。
たりないものはメールの時代における文通の「明確な目標」です。「不登校・引きこもり・対人不安の人から発信する個人情報」(『ひきコミ』の発行スタンス)の文通を一歩進めた「引きこもりの人とつながる」ことです。他にも明確にしたいと思うことはありますが省きます。
この目標をみすえて、企画全体を考え、手紙チームをそこの組み込んだのです。その意図は上に書いたとおりです。

引きこもりへの手紙活動の参加申し込みがありました

10月1日に書いた「引きこもりの人と家族への手紙活動」を、3日に発送しました。たぶん4日か5日には到着しているはずです。
10月8日、さっそく「手紙活動に参加する自己紹介」が1通ですが返ってきました。ずいぶん早いと思います。これがどの程度の人数の参加になるのかはまだ予測は付きません。数人分まとまったところで「手紙で交流しませんか-手紙活動参加者名簿」の冊子を作ります。
その冊子を引きこもり当事者・家族に届け、手紙交流の案内をします。このような活動に関心を持つ人には、活動の方法と申込書を送っています。多くの方の参加を期待しています。特に引きこもり経験のある人の活動参加をお願いします。
19日(土)午後には、説明会も予定しています。

引きこもりの人・家族との手紙活動に取り組みます

引きこもり状態の人と家族に手紙でつながる取り組みを始めます。関心のある人に企画書などをお送りしますので連絡をください。〔メール:open@futoko.info、FAX:03-5875-3731 松田〕
手紙活動参加希望者のための説明会を10月19日(土)午後1時30分から3時30分まで開きます。場所は不登校情報センターです。

手紙の送り先(手紙を受け取りたい人)は、主に家族から相談を受けた引きこもり状態の人です。その当事者は必ずしも手紙をもらうことに同意しているわけではありません。開始のときは家族の同意が必要条件です。引きこもりの家族が希望されるときは家族と手紙交流をすすめます。
手紙活動参加者の自己紹介を書いていただき、数人分まとめて「手紙で交流しませんか-手紙活動参加者名簿」を作ります。それを引きこもり当事者・家族に届け、手紙交流の案内をします。引きこもり経験のある人の活動参加を期待します。
引きこもり状態の人の様子は「手紙を受け取りたい人」の家族に書いていただき、それを冊子にして手紙活動参加者に送ります。それを参考に手紙を書きます。当事者が自分の様子を書くこともあると思います。そのときは当事者との手紙交流になります。
手紙の交流は「あゆみ書店手紙チーム」(不登校情報センター)を仲介して行います。
手紙は「あゆみ書店手紙チーム」が発送前に読みます。初回は「あゆみ書店手紙チーム」の添え書きをつけますし、以降も必要に応じて添え書きをつけます。この取り組みは以前の『ひきコミ』誌による文通を発展的・組織的にする性格になります。
手紙活動参加者が書くとき気をつけることは、①個人的な体験談がよく、過去の困った経験や失敗談が入るといいと思います。②アドバイスや説教的なものは読む気をなくしますので歓迎できません。外出や人の中にはいるのを強要せず、共感する内容をめざしてください。③書き方によっては書き直しをお願いすることもあります。④手紙は手書きの直筆だけではなくパソコンを使うことも認めます。⑤これらの理由から引きこもり経験者がいいのです。
この取り組みに参加する「手紙を受け取りたい人」は有料です。入会金3000円と手紙の到着1回(または到着月単位)1000円です。手紙活動参加者の参加費は不要です。手紙を書くと1通400円で、3000円以上になったら渡します。これは試験的な金額です。
手紙活動参加希望者のための説明会をします。10月19日(土)13:30~15:30。定員5名、参加費無料です。説明会に参加しなくても手紙活動に参加できます。

引きこもりの本人と家族への手紙活動を企画中です

親しくしています名古屋の木村登校拒否相談室の木村茂司先生からの質問の回答に、引きこもり状態の人に手紙を書く取り組みの例がありました。
不登校情報センターでは、引きこもりの人への訪問によるメンタルフレンド活動を続けています。メンタルフレンドは、訪問活動の開始まで、本人と会えるようになるまで、その後の展開などいずれも多くの課題があります。木村先生の手紙活動を見て、引きこもっている人に手紙でつながる方法もすすめたいと考えました。訪問と手紙がうまくミックスすれば活動全体が向上すると思えます。
そこで文通ボランティアの方に、この引きこもり状態の人への手紙活動への参加をお願いすることにしました。継続的な取り組みにするにはある程度の仕組みや基準づくりがいります。仕組みが決まればこれまでの文通ボランティアの方以外にも参加を呼びかけます。
手紙活動の説明会も必要になりそうです。