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第一章 子育てに関する家族史

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第一章 子育てに関する家族史

「僕たちに必要なのは親という名の人間ではなく僕たちを愛してくれる人間」『はみだしっこ』(三原順)、「ちょっとは母親らしくしてよね」『ホットロード』(紡木たく)…。
少女まんがの中ではしばしば、親への反感が主人公たちの台詞に表明されていることがある。
これらの台詞からは、親からの愛情や母親が母親らしく振舞うことが当然のこととして要求されているようである。
しかし、現代の社会で当然とされている親からの愛情や、母性を持った母親像は、家族史から見ると、近代になってから成立したものである。
親が、(特に母親が)子供をかわいがらなければいけないという考え方は、普遍性のあるものではなく、近代社会以降、産業形態の変化に伴って、段々一般に普及したものである。
フィリップ・アリエスの『子供の誕生』(1966)によると、中世ヨーロッパ社会では子供という概念がなく、ものごころ付けば、「小さな大人」として扱われていた(落合1994、61ページ)。
また、中世社会では子供はその母親だけによって育てられるものではなく、家内工業や、農業などに従事する周りの大人たちとの関わりによって成長していった。
また、近代化が進むと共に、子供のしつけ、教育の必要性が説かれるようになり、子供に対する愛着の感覚、子供をかわいがる感覚が、まず生活に余裕ある上流階級の大人たちの間で発生した(山田1994、111ページ)。
また、母親であれば、子供には優しくするものであるという母性神話も、近代家族以降に定着したものであった。
ジャン・ジャック・ルソーの『エミール』のなかで初めて、女性が母親や妻として家族の感情をケアする情緒的な存在として描かれ、そこでは女性は本来的に母であって、子供の教育の重要性と、子供の教育の役目、家庭内の安らぎ的存在を担うものというイメージが出てくる(山田1994、134ページ)。
それ以降、子供をかわいがる感覚が当たり前となり、18世紀末には、子供は、母親の愛情を受けて当然とされるようになった。
また、近代社会になって、産業化が進むと女性は生産労働から排除され、家庭が女性の居場所とされる傾向が強まる。
しかし、近代の女性にとっては、「母」であり、「女」であることは時として嫌悪の対象とさえなっていった面もあるのではないだろうか。
一方日本の子供への関心はどうであったのだろう。
有賀、篠目著『親子関係の行方』(2004)によれば、親子関係が親密になってきたのは江戸期からであった。
子供がしつけの対象となったことから子供への関心が出て来たのは西欧と同じで、当時の人々の子供への関心は高かったことが伺える。
その頃武士階級では、子供は家の跡継ぎとしての子供ととらえられ、子供のしつけの役目を担っていたのは、主に父親であり、子供の社会化がその目的であったとされる。

明治期になると、政府の政策から女性の役割が見直され、女性の家庭内役割が国家の発展に寄与するものと考えられるようになり、良妻賢母のイデオロギーが唱えられるようになる。
この頃から父親は子育てから遠ざかっていった。
大正期になると、新中間層が都市部で増え、昭和期の民主化を経て近代家族の子育て観が当たり前のものとなっていく。
戦後、産業化により生産労働を担う夫と、家庭の責任を担う妻という役割分業が補強されたものとなり、70年代、子供の養育責任は母の手に任され、父親不在が加速してゆく。
80年代になると、核家族化の中で共働き家庭が増え、母親が家庭に居るという近代家族イメージが崩れ始める。
このように、親が子を愛するものとするイデオロギーは、18世紀になって出てきたもので、愛情のために子供をケアする母親像、家の中で母としてのみ生きる母親像、また子育ては母親だけによってなされるものというイメージさえ、近代社会の成立以後できたものであった。
しかし、子供への関心が子供にとってしつけ、教育の必要性から考えられたこと、子供にとっても親子の会話などが必要であること、現代では子供が一人前になるまでに長い期間を必要とすることを考えると、近代化の産物である母性も、子供側から必要なものであるとも思え、親側と子供側の双方のための親子のあり方が求められなければならない。


少女まんがに描かれた母親像
第一章 子育てに関する家族史
第二章 まんがについて
第三章 母と、娘の個の確立ー山岸涼子の作品を中心に
第四章 母の生き方と娘ー萩尾望都の作品から
第五章 1980年代後半からの母性肯定とその後
結論&註・参考文献・まんが資料

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