小岩特別支援学校の発表会に参加

「東京都立小岩特別支援学校 全国発表会」に参加いたしました。
学校単位としてすばらしい取り組みをしています。
私なりの理解によればこれは“校内研修会”を発展させたものです。
しかし、それを公開していて、しかも公開するだけの内容があります。
いただきました「平成23年度 研究紀要」には『小岩特別支援学校におけるセンター的機能について』という章があります。
それは学区の江戸川区における“センター的機能”について書いたものですが、実践内容的には全国的な教育研究センターの機能も持ちうるのではないでしょうか。
こう書くと誉めすぎになりますからこのへんでやめておきます。

子どもの教育活動に熱心な教職員が多数おり、管理職教職員がそれを推進しています。
公立の特別支援学校にどれほどの可能性が開かれるのかを実感させていただきました。
参加する前には“全国発表会”とした意味を私はあまり理解していませんでした。
そして参加してみてそれだけの内容があると納得しました。
私の参加目標の1つは「特別支援学校・養護学校」の情報入手フォーマット用紙の参考にすることです。
とりあえず用紙(案)を点検する材料を得ました。
発表会の場で聞いた坂爪一幸先生の講演の感想もおって書いておくつもりです。
講演テーマは「神経心理学の視点からとらえるコミュニケーションの指導」です。

広木克行先生の講演感想の(2)

「若者は自己実現欲求を求めている」を後半部分のタイトルとします。

広木先生の話のなかで感じたもう一つはマズローの欲求5段階説についてです。
①生理欲求(睡眠、飲食)、②安全欲求(経済的安定、健康維持)、③社会的必要と愛情欲求(所属、友達)、④自我欲求(尊敬されたい、承認)、⑤自己実現欲求。
私はこのようにマズローの欲求5段階説を要約します。
私はこの説を聞いたことはありますが、それへの関心は低かったと思います。
私が関わる引きこもり経験者のかなりの多くは、⑤自己実現要求が高いと思うからです。
こういうには説明がいると思います。彼ら彼女らの多数が自己実現をめざして動いているのとは違います。
①生理欲求は家族のなかで充足しています。
「②安全欲求、③社会的必要と愛情欲求、④自我欲求」の充足は低いでしょう。というよりもこの面の到達がきわだって低いことが引きこもりの特徴ではないかと思います。
それらとの相対的な関係において「⑤自己実現要求が高い」のです。
しかし他の社会的グループと比べてみると「⑤自己実現要求が高い」とはいえません。
引きこもりのなかには何をしていいのかわからない人も少なからずいます。
そういう大まかな意味でマズローの欲求5段階説は有効性があります。
それを確認したうえで「②安全欲求、③社会的必要と愛情欲求、④自我欲求」は十分な充足でなくとも、「ある程度の充足」または「最低限の充足」があれば、⑤自己実現要求に向かうのではないかと思います。

私の推測ではこれは社会的・歴史的背景によるものではないかと思います。
これは広木先生も紹介されました情報社会の進行が関係しています。
「好きなことを仕事にする」というのは『Web2.0でビジネスが変わる』(神田敏昌、ソフトバンク新書、2006年)の中のひとつの章のタイトルです。
ネット活用により“好きなこと”が収入になる時代が近づいています。これに相当する意見はネット研究者、情報社会の研究者のなかでいろいろな人が実例を挙げて紹介しています。そんなものは空虚であるという異論もあります。
しかし空虚とばかりはいえなくなってきている感覚を私はだんだん強くしています。ネットを使って好きなことに熱中しているとそれが収入になる事態は増えています。社会全体がそうなったとは思いませんが徐々に広まり例外とはいえなくなりつつあります。
私の感覚では、この情報社会という時代背景が若者世代のなかで無意識に成長し反映しているのではないかと思うのです。

これらが私のなかではマズローの欲求5段階説への関心を相対的に低くしていたように思います。
言い換えますと「②安全欲求、③社会的必要と愛情欲求、④自我欲求」は十分満たされてなくても、若者世代には⑤自己実現要求に向かう傾向があること、それは情報社会の到来が無意識のうちに表れていることにより作動していると思えます。
マズローの欲求5段階説は生きているけれども相対化されるのではないでしょうか。
私は、まだ十分に説明できないけれども若い世代の⑤自己実現要求に向かう傾向をきわめて肯定的に評価し応援しているつもりです。