「内職の紹介」の提案がありました

情報センターの関わることは多くあり、これ以上私個人が担当するのは無理があります。
関心がある人で話し合ってどうするのか決めるのがいいと思います。
提案文は次のとおりです。

「不登校情報センターでは、「内職の紹介」というのはやってないのでしょうか? もし可能なら、センターのほうで「健全な内職」を当事者に紹介したらどうでしょう?

「内職なんかやっても、いくらも稼げない」とおっしゃるかもしれませんが、稼ぐ金額は二の次だと思います。まずは「無職からの脱却」が重要なのです。内職で稼げるのは、月に一万円もいかないかもしれません。あるいは、月収千円とか五百円とかの世界かもしれない。それでも、やってみる価値があると思います。「家でダラダラしているだけじゃない、自分にはやるべき仕事がある」、そう思えるだけでも、違うのです。

正直「無職」と「内職」では、全然違います。「内職」は誇れるような職業ではないけれど、「無職」よりかは、はるかに「まし」です。それは同時に、両親に対してもプラスのアピール材料になります。「内職をしている姿」は、「自分なりに頑張っている」ことを示しています。少なくとも、一日中ベッドに横になっているよりは、はるかに健全です。「内職」には、ひきこもりが生き残れる可能性を感じるのです。

なぜ、センターに紹介して欲しいかというと、世間には「いかがわしい内職」がとても多いからです。ひきこもりの増加に伴ってでしょうか、内職詐欺は驚くほど増えています。ですが、センターがきちんと調べて、健全なものだけを抽出し、太鼓判を押して紹介してもらえれば、当事者は手を付けることができます。個人で調べていても、どの内職が健全なのか、なかなか判断ができません。

内職で稼ぐ金額は微々たるものかもしれませんが、月にコーヒー一杯ぶんにはなるかもしれない。そのお金は、当事者たちに「自分は無職ではない」という矜持を与えることでしょう。

「内職の開拓」をセンターに着手して欲しいと思い、こんな提案をしてみました。」

広木克行先生の講演感想の(2)

「若者は自己実現欲求を求めている」を後半部分のタイトルとします。

広木先生の話のなかで感じたもう一つはマズローの欲求5段階説についてです。
①生理欲求(睡眠、飲食)、②安全欲求(経済的安定、健康維持)、③社会的必要と愛情欲求(所属、友達)、④自我欲求(尊敬されたい、承認)、⑤自己実現欲求。
私はこのようにマズローの欲求5段階説を要約します。
私はこの説を聞いたことはありますが、それへの関心は低かったと思います。
私が関わる引きこもり経験者のかなりの多くは、⑤自己実現要求が高いと思うからです。
こういうには説明がいると思います。彼ら彼女らの多数が自己実現をめざして動いているのとは違います。
①生理欲求は家族のなかで充足しています。
「②安全欲求、③社会的必要と愛情欲求、④自我欲求」の充足は低いでしょう。というよりもこの面の到達がきわだって低いことが引きこもりの特徴ではないかと思います。
それらとの相対的な関係において「⑤自己実現要求が高い」のです。
しかし他の社会的グループと比べてみると「⑤自己実現要求が高い」とはいえません。
引きこもりのなかには何をしていいのかわからない人も少なからずいます。
そういう大まかな意味でマズローの欲求5段階説は有効性があります。
それを確認したうえで「②安全欲求、③社会的必要と愛情欲求、④自我欲求」は十分な充足でなくとも、「ある程度の充足」または「最低限の充足」があれば、⑤自己実現要求に向かうのではないかと思います。

私の推測ではこれは社会的・歴史的背景によるものではないかと思います。
これは広木先生も紹介されました情報社会の進行が関係しています。
「好きなことを仕事にする」というのは『Web2.0でビジネスが変わる』(神田敏昌、ソフトバンク新書、2006年)の中のひとつの章のタイトルです。
ネット活用により“好きなこと”が収入になる時代が近づいています。これに相当する意見はネット研究者、情報社会の研究者のなかでいろいろな人が実例を挙げて紹介しています。そんなものは空虚であるという異論もあります。
しかし空虚とばかりはいえなくなってきている感覚を私はだんだん強くしています。ネットを使って好きなことに熱中しているとそれが収入になる事態は増えています。社会全体がそうなったとは思いませんが徐々に広まり例外とはいえなくなりつつあります。
私の感覚では、この情報社会という時代背景が若者世代のなかで無意識に成長し反映しているのではないかと思うのです。

これらが私のなかではマズローの欲求5段階説への関心を相対的に低くしていたように思います。
言い換えますと「②安全欲求、③社会的必要と愛情欲求、④自我欲求」は十分満たされてなくても、若者世代には⑤自己実現要求に向かう傾向があること、それは情報社会の到来が無意識のうちに表れていることにより作動していると思えます。
マズローの欲求5段階説は生きているけれども相対化されるのではないでしょうか。
私は、まだ十分に説明できないけれども若い世代の⑤自己実現要求に向かう傾向をきわめて肯定的に評価し応援しているつもりです。

不登校情報センター・ワークスペースの現状

「日本発達障害ネットワーク第7回年次大会」の感想その4です。
今回は大会をやや離れて不登校情報センターの現状を評価したいと思います。
社会が障害者に近づく、特定子会社を超える障害者の受け入れ、当事者主体の職場づくりなどずいぶん理想的なことを感想に書きました。
いったい不登校情報センターの取り組みの現実とどんな関係があるのか、そこを考えるものです。
(1)ワークスペースでの作業、それは日常的にはパソコンを使う作業ですが、時には事務的なことや以前にはポスティングもしていました。これには作業費を支払います。2003年終わりからですから8年間毎月続いてきました。
ただし、作業費は低額であり、労働基本法の最低賃金以下です。しかし、労働基準法に違反をしているわけではありません。同時に将来は最低賃金以上にはしたいと思います。それに支払い遅延はよく発生します。それでも継続してきていることは事実です。
(2)作業に対し作業費を支払う対象は、当事者であり会員です。会費をもらいながら作業に対して支払います。収入全体を個人の出来高により支払ってきました。作業の知識・能力・技術は個人差が大きいのですが基準時間当たりの作業費にそれほどの差は出していません。
(3)作業時間は、週1~4日、1日2時間~6時間、45分業務と15分の休憩、これが基準です。これだけで大きな個人差がでますが、作業においてはこれをはみ出すことも少なからずあります。そのぶん差は大きくなります。休憩はこの基準によらず作業を続けるタイプが多いです。
(4)そんな状態では社会生活に必要な収入を得ることができない、という意見があるはずです。その通りですが、その意見がなくても、意見をされても、実際に作業ができない現実が厳然とあり、それを改善ができないなかでは何の反論にもなりません。言葉をかければ事態がかわるわけではありません。
結局、その意見は限定的に働ける人を全く働かない状態に追い込むだけであり、無策です。その状態では生活できないことは社会福祉政策で対処するしかありません。それは生活保護制度などを改善することになるでしょう。
(5)しかし、ネット社会、情報社会ではそのような限られた作業状態でも生活できる収入の道が開かれようとしています。それは限られた人が対象になるしかないかもしれません。私が向かうのはここを阻止しないで、むしろ積極的に伸ばそうとすることです。
(6)いずれにしても大きなことを言える状態ではありません。小さな、低いレベルにいることは確かです。可能なことは追求し、ミニサイズの原型をつくってきています。それを発展させようとするのです。
意識してきたことは引きこもり経験者が収入を得られるワークスペースづくりです。それは発達障害者が中心の職場にも通じるのではないか、そんな思いがあります。

「特例子会社」と発達障害者が主体の職場は異なる

「日本発達障害ネットワーク第7回年次大会」の感想その3です。
参加した講座のなかに「就労の課題」の報告がありました。そのなかで「特例子会社」の様子を聞きました。
「特例子会社」とは相当規模の企業が、障害者雇用の法律的基準以上を満たすために、障害者中心の働く場をつくり運営する職場です。現場の責任者たちは障害者雇用に関する熟練者、福祉や心理職の専門家といっていいのでしょう。
このような場の広がりは、発達障害の支援として有効なものです。不登校情報センターに関わる当事者にもその形で就労している人もいますし、また障害者雇用を進める企業団体からの協力の呼びかけも受けています。これからも「特例子会社」の広がりに期待することは大きなものがあります。

その一方では、障害者、特に発達障害者の雇用が「特例子会社」に収斂する、集中することを喜ばない気持ちもあります。
彼ら彼女らが、その生活スタイル、労働のしかた、そして心理状況をそのまま持ち込むタイプの職場が実現できる可能性を信じるからです。それが可能なのは発達障害者の現状から見れば少数になるのかもしれません。それでもそういう見本、旗印が必要であると思います。
私には発達障害者には、人間の未来を示すものが潜んでいるという予感めいたものがあります。人間の進化の過程を模索している姿があると思えるのです。模索の過程とは正常な状態と逸脱した状態が並存するものです。それはどの人間にも偏りが、すなわち得手不得手があります。その範囲のことです。
そうすると発達障害といわれている人たちは、将来になると違った言葉で表現されるのかもしれません。そういう人が「特例子会社」という場所に活路を見出すだけというのは、やはり違うのはないか。その意味で、自らが主導して作り出す職場の見本と旗印が生まれると思います。
もしかしたら「特例子会社」のなかで、発達障害者がその生活スタイルをそのまま持ち込む現象が生まれるのかもしれません。この講座ではそこを感じました。

“社会が障害者に近づく”状態にたどり着きたい

“社会が障害者に近づく”状態にたどり着きたい
「日本発達障害ネットワーク第7回年次大会」その2

「日本発達障害ネットワーク第7回年次大会」に参加し、発達障害に関わる教育、福祉等の取り組みの着実な広がりを感じました。ここまで取り組みが広がっている背景には母親たちの粘り強い運動の成果があると思います。しかし、就職に向けての取り組みをきいていると、社会への適応と就職できる状態に傾いている気がしました。
はじめに出席した「壁を避けずに乗り越えよう―テクノロジーを使って、学び、働く」講座などでは“社会が障害者に近づく”方向も提起されましたが、教育や就業支援の現場では“障害者が社会に近づく”あれこれの話で占められていたという思いがあります。それも現状ではやむをえない面もあります。

そうじゃない、“社会が障害者に近づく”方向を主張したいものです。だがそれには多様な方法での多くの実例が必要です。そうでなければ発達障害の当事者も家族も納得させることができません。障害者が社会に近づく道に納得しても、それは不条理な、自分には責任がない苦難の道です。
あれこれの取り組みを聞きながら、不登校情報センターを引きこもり(発達障害を含む)を経験した成人による安定的な経済単位として確立させたい思いを本当に強くしました。そういう実例がなければ、当事者は支援を受ける対象に向かうしか流れはできそうにありません。
他にも“社会が障害者に近づく”動きはあると想定しますが、私は自分の持ち場をそうしたいです。その動きがあちこちで生まれていなくては、学校や福祉の取り組みは、理念としては“社会が障害者に近づく”方向を認めても、日常の実践の主流は“障害者が社会に近づく”方法にならざるを得ないのです。
“実践優位による理論と実践の統一”を考えれば、実例をつくるしかない! でしょう。

「障がい者雇用促進」と引きこもり支援

「障がい者雇用促進」をすすめている株式会社D&Iの人が尋ねてこられました。
不登校情報センターとして引きこもりの自立にどんなことをしているのかという質問から始まりました。その質問にはそれなりにお答えしたのですが、別れた後で少し違う点を考えてしまいました。
主に話したのは、対人関係づくりが中心になる人が多くいることです。家族とは話ができるし、外出もしている。しかし、仕事に就くように動くのは抵抗感が強い。そういう人との接点ができれば引きこもり支援も、現状よりはかなり前進します。
しかし、支援団体の多くはそこを超えてやってくる引きこもりを待っている。そうするとなかなか支援対象者は増えません。仮に多く来るようになったとしても、それは最初の課題を何らかの方法で乗り越えてきた人であり、支援団体の役割はその部分には関与せず、それを引き継いだ場面の人たちに関与しています。
引きこもりの中心が対人関係づくりであり、その後の就業支援は引きこもり支援とはいえ(少なくとも引きこもりの最大多数がいる)最重要な局面を外れたところの支援をしていることになります。

支援団体として、その分野に踏み出すのは意外と大変です。“費用対効果”という視点からはいい成績が上げられないと思います。事業としては収支赤字に近づくということです。特に20代後半以上の引きこもり支援はそうなりやすいでしょう。そうするとその人たちへの支援は空白になります。現状はそういう事態が続いてきた結果です。
その空白の付けは、近い将来に否応なく表面化するでしょう。たとえば長期の引きこもりからの生活保護の増大や自死者が多数出ることです。これは社会として正常な存続とはいえない事態です。

だからそこに取り組んで欲しいのですが、果たしてどこまでできるのか。期待をせずに応援しようという気分です。人に難題を押し付けるのは好むところではありません。ただ誰かがやらなくてはならないし、やる人が多く現われることを期待するのも確かです。

D&Iの人からは障害者雇用に関していくつかの事情を教えていただきました。なかなか眠れない、朝起きるのが大変という人を早朝の短時間就労で雇用をしている会社があるそうです。ベストかどうかは個人差があり一律には判断できませんが、一つのやり方と思いました。
従業員の1.8%を障害者枠にする法律については、「法の縛りがあるから雇用するというのではなく、もっと積極的な気持ちで雇用して欲しい」という、熱い気持ちを語られました。気持ちはわかりますがこの枠を外すわけにはいきません。それでは障害者雇用は現在の水準さえ崩壊させてしまいます。そういう意見交換もできました。

職業体験発表会のプログラム決定

11月20日の「引きこもり当事者による職業体験発表&交流会」の準備会を開きました。
集まったメンバーは5名です。ほぼ「チョコシゴ」メンバー。
当日の発表者は5名に増えました。
開始は午後1時、終了予定は4時半。
〔Ⅰ〕初めに体験発表を次の順でします=約1時間。
*話したことを松田が聞き取った感じでタイトル名にします。
(1)女性・「よい子」を卒業し、仕事に就いたけど。
(2)男性・接客と肉体労働の体験。
(3)女性・仕事をしないのも悪くはない=自分を取り戻す時間が大事。
(4)男性・仕事につくきっかけ=続いた仕事と続かなかった仕事。
(5)女性・私の失敗談と引きこもり宣言。
〔Ⅱ〕質問に答える形で交流会をします=1時間余りを予定。
〔Ⅲ〕グループに分かれた雑談と個別の相談会=1時間余りを予定。

*準備する人は20日は12時にわせがく高校に集合してください。
*当日配布する資料を考え確認しました。
*参加者は25名前後になると予測しています。
*予定よりも親の参加が多くなりそうなので、当事者の参加をお願いします。
*次にどうつなげるのかも話し合いました。

朝日“引きこもりの職業体験発表会”を紹介

朝日新聞に20日開く「引きこもり経験者の職業体験発表&交流会」が次のように紹介されました。

引きこもり体験 悩みや自立語る
新宿で20日、発表会
不登校や引きこもりの経験者らが社会復帰への体験を語る発表会が、20日午後1時から、わせがく高校東京キャンパス(新宿区高田馬場4丁目)で開かれる。NPO法人・不登校情報センター(葛飾区)などが開く。
引きこもりに悩む人や家族に向けた相談会も予定しており、主催者は「社会と接点を持てない現状を変えるヒントにしてほしい」と参加を呼びかけている。参加費は、引きこもりに悩む当事者が200円、それ以外が500円。問い合わせは同センター(03-3654-0181)。
体験を話すのは、30代以上の男女3人。現在は介護や清掃関連の会社などでそれぞれ働いているが、長年引きこもりの状況が続いたという、当時の状況や、就職までの経緯などを語る。
〔2011年11月16日「朝日新聞」第2東京面・都内版〕

当日の内容は明日17日にメンバーが集まり最終調整する予定です。
このメンバーが本当の主催者「チョコシゴ」です。
不登校情報センターは裏方なのですが、表に出るしかないのです。
当日はかなりのドキドキ体験発表になりそうです。それだけに実感あふれるものになるでしょう。
多くの引きこもり経験者と家族の参考になります。参加をお待ちしています。

社会参加支援の方法の取材を受ける

ある新聞社社会部の記者の取材を受けました。
引きこもり経験者の社会参加に、不登校情報センターはどのように関わるのかが取材のテーマです。
(1) ①家から出られないなどの状態には訪問活動、②出られるようになった人にはフリースペースに、③それに続くのが就業支援、この3つの段階があります。

(2) ③の就業支援に関しては、当事者の関心による方法と手段の違いがあります。(a)中心は不登校情報センターのスペースに来て作業をします。主にホームページ制作や文書入力です。作業をしながら対人関係づくりの訓練をし、将来を探る状態です。(b)そのほかに創作活動をする人がいます。文芸的なもの・絵画的なものの作品制作です。装飾品や日用品を作る人もいます。これらの人には作品発表の展示会と作品販売会の機会をつくります。これが不登校情報センターの役割です。しかしこの取り組みの到達状況はまだ初歩レベルです。
(c)今年になってから始めたことは、自営業的な方向をめざすものです。

(3) (c)の自由業的方向について、いちばん詳しく話しました。メイクを仕事にしようとする人、自営の整体師をめざす人がいます。訪問サポートをする人、パソコンの教師、編み物教師などが特徴的です。これらに共通するのは、対個人サービスの仕事です。これが引きこもり経験者のある割合に適合する職業であると確信できたのが今年の収穫です。
就職型の会社勤めは、社員間の人間関係が壁になります。ところがサービス対象の相手の人とはとてもいい関係ができるようなのです。その結果が自営業型の対個人サービス業です。
各人の性格や関心によってどんな職業を選ぶのかは任されます。営業や広報活動をする企画部を不登校情報センターが担当していくものです。

おおよそこのような方向を話しました。これが実情ですが、しっかりした道が整っているわけではありません。当事者と共にこの道をつくろうというわけです。それが仕事起こし、仕事づくりの社会参加の方法です。
新聞でどのように報道されるのでしょうか。それはたぶん数日後にはわかるでしょう。そのときはまたこのページでお知らせいたします。

障害者雇用に取り組む会社の保護者セミナー

障害者の雇用を促進するのが目的のTerakoyaBABという会社の方がこられました。小中学生の学習塾をすすめ、高校生障害者の雇用を図る取り組みをしているとのことです。精神障害と発達障害が重点になるようです。始めて2年ほどなので実績という点では短い期間ですが、このような取り組みをする事業所が出来ていることは1つの時代を感じさせます。
そのTerakoyaBABは11月から12月にかけて開く2件の保護者セミナーの案内をいただきましたので「イベント情報」ページに紹介しておきます。