家事サービスの外注(社会化)と周辺

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家事労働の社会化と社会状況(結婚減・少子化・高齢化、雇用における非正規社員の激増)の大きな変化の始まりである1990年ごろのサービス業の変化を見ます。

サービス業の種類(分類)をTBSブリタニカ版で岡田康司さんは詳しく紹介しています。ここでも岡田さんはサービス産業全体ではなくサービス業の範囲を述べています。1995年発行の時点では第三のサービス業のうちの公共サービスの記述はあまりなく、問題の所在を指摘するだけです。

分類は中分類と小分類に分けられ、中分類には情報サービス、ビジネス向けサービス、家庭向けサービス、運輸サービス、小売・飲食・リースの5項目があります。私がめざす部分は対人ケアワークであり、それは主に家庭向けサービスに関係します。その紹介の全文を紹介します。家事代行など6項目が小分類にあたります。

「家庭向けサービス

女性の社会進出、就労機会の増加を背景として、従来、家庭内で行われていた掃除、洗濯、料理、育児などの家事労働が家庭外にゆだねられる傾向にある。家事代行業や介護サービスといった新しいサービス、ビジネスが生れている。

家事代行業  共働き夫婦の増加、外出する主婦の増加という社会現象を受けて、これまで国民総生産(GNP)に反映されなかった家事がビジネスとして注目されている。

家事代行業とは、家の清掃、買物、留守番からペットの世話、草取りといった家事周辺の業務を代行するもので挨拶状の代筆、印鑑証明の受取りといった特殊な注文にも応じる。

既婚女性のうち職業をもつ人の割合は、1990(平成2)年に3人に1人を数え、家事代行サービスに対する潜在的な需要はきわめて大きく、今後拡大が期待されるビジネスである。現在のところ注文をこなすだけの人手が不足し、需要に供給が追いつかないのが実情のようである。

ベビーシッター・サービス  親が留守の間、子供の世話をする人を個々の家に直接派遣するサービス。欧米では長い歴史をもち、学生のアルバイトとしても定着している。日本においても、女性の社会進出や核家族化などを背景に、近年利用者が急増している。子供の世話だけでなく、家庭教師役も兼ねるものなどサービスの内容はさまざまである。

現在、シッター派遣を法人として手がけているのは100社に上るが、主婦や学生が集り、電話1本で事業を行なっている個人営業的なところも多く、事業規模などは定かでない。

ホームパーティ出張サービス  パーティなどに出張し、その場で調理した料理を提供するビジネス。盛りつけやテーブルセッティング、会場づくりなども演出する。家庭向けだけでなく、企業向けもある。市場規模は800億円といわれ、外食産業はもとより百貨店、スーパー、食品メーカーなど異業種からの参入が相次いでいる。それに伴い、サービスの内容も多様化し、ピアニストなどの演奏家の派遣サービスをオプションとして提供する業者もいる。

在宅ケア・サービス  自宅で生活する高齢者や障害者に提供される介護や家事援助を中心としたサービス。核家族化の進展などにより、家庭におけるそれらの機能が低下してきていることから、在宅の寝たきり老人などに対し、身のまわりの世話や食事などのサービスを行う民間事業者がふえてきている。

事業者は現在のところ、資本金500万円未満、従業員100人未満の企業が多く、事業規模もまだ小さいものである。シルバー・ビジネスはその性格上、行政施策とは切り離せないものであり、むずかしい面もあるが、高齢化社会の到来に向けて、その成長性が期待されるビジネスである。

学習塾  小・中学生を対象に、学校で習う国語、数学(算数)、理科、社会、英語の補習または、中学・高校進学のための受験指導を行う教育機関のことである。市場規模は約6000億円、全国で四万ヵ所近い塾があり、450万人もの生徒が通っている。

学習塾業界は、経済の高度成長による家計所得の増加、第二次ベビーブームなどを背景に大きく成長し、その後も順調に成長を続けたが、今後は出生率の低下により生残りの時代に入っていくと予想される。

カルチャーセンター  自己啓発、レジャー能力の開発をねらいとした講座を有料で提供するサービス。1948(昭和23)年、阪急百貨店が「阪急婦人文化教室」の名称で5つの講座を開設したのが始まりといわれる。現在、カルチャービジネスには百貨店、新聞社、放送局など各種業界からの参入がみられる。

カルチャーセンター利用者は、OLと主婦そして中高年の男性が中心となっている。この3つの層は、時間的にも経済的にも比較的恵まれており、学習意欲はあるが、学校教育、企業内教育とは無縁あるいはそれだけでは満足できない状況にある。

OLについては、語学、ジャズダンス、テニス、ダイビングなどのスポーツや結婚のための習いごとなどにニーズがある。一方、子離れした主婦については、趣味を通じたグループ活動、生きがい発見などのプログラム、また中高年男性については、定年後をどのようにして過すかなどの動機から、生涯学習に関連したプログラムに人気がある。」『ブリタニカ国際大百科事典』(第7巻、1995年7月第3版初刷、TBSブリタニカ p813)

以上のうち家事代行業、在宅ケアサービスが特に関係します。学習塾は従来から存続していることですが、説明に保育が含まれないのは学校と同じく、サービス産業(第三次産業)の1つに格上げされているためでしょう。

家の清掃などは家電製品の開発普及により絶対量はかなり軽減していると思います。洗濯(クリーニング、コインランドリー)は実質的な家事の外注(社会化)です。在宅ケアサービスは家庭内の高齢者の増大と結びつくものですが、「公共サービス」の面から見たいと思います。介護施設はいずれ学校、保育所と並びサービス産業の一部に格上げされるでしょう。

ここには引用していませんが中分類「情報サービス」の1つ「結婚情報サービス」は、女性の就業率の増大や自立性の高まりと合わせた社会状況とインターネット普及が関係します。

中分類「ビジネス向けサービス」の「人材派遣業」は、90年代以降の規制緩和による非正規雇用の増大と職業紹介の民間開放という政策転換によるものです。1970年代半ばに始まり、2020年には全就業人口の40%に達しています。これは日本における就業・雇用状態の大変化であり、不安定な就業、不安定な生活条件のもとになっています。

同じ中分類の中に「ストレス解消ビジネス」があります。「医療と異なる立場で物理療法や心理療法を用いてストレス解消をねらっている企業が多い」とされます。カウンセリングルーム(心理相談室)はその代表です。大事典では「ストレス解消」「気分転換」などと書かれていますが、それ以上の役割を受け持っています。

1980年後半に出現したフリースクールは小分類「学習塾」の新型とみることもできます。フリースクール、カウンセリングルームに並行して生まれた不登校親の会がありますが、これらを含めて、サービス業の第三「公共サービス」のところで改めて見ていくことにします。

1990年代以降(バブル経済崩壊以降)の社会状況は、自治体と政府の施策に大きな影響をしています。岡田康司さんの記述はそれ以前の状況を書いたものです。「公共サービス」というサービス業で改めて見るのが妥当でしょう。

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