引きこもり支援に関する本はなぜか読む気がしないです

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私がまだ編集者として働き、職業意識が今よりも編集者らしいと思っていたころ、編集業務とは何かを書いたことがあります。残念ながらその原稿は手元にはありません。捨てた記憶はないので何かの拍子に出てくるかもしれません。
その自分で書いた原稿を見ながら、それがいかに市販の編集者を書いた本の編集者像と違うかにわれながら驚いていました。
ところが最近『編集バカとバカ編集者』(坂崎靖司、二玄社、1994年)という古本を手にしてみて、少しは私と相通じる感覚の編集者を見る思いがしました。正直に申しますがこの本を書かれた編集者は私よりはかなり優れています。自分よりは「少し上」と感じる場合は「かなり上」という実態だそうですから、実力は私の想像以上であると思います。
雑な言い方ですが、編集者たるものあまり品行方正ではないのがいいと思います。日常の行動・行状をさすのではなく、発想というか考え方を指してのことです。四角四面の考え方ではなく、思考にちゃぶ台をひっくり返すような試みやスタンスがいるのです。

実はここまでは前置きです。本題に入ります。
図書館、本屋さん、古本屋…こういうところにはよく行きます。ところが自分が関わっているはずの心理学、カウンセリング、不登校・引きこもり支援等の関わる本に手が出ません。以前はこの種の本を読んだことがあるし、いまも時たま読みはするのですが、つまらないです。甘いだけのお菓子というか、苦いだけの薬というか、わかりやすさや営業目的をねらった文章の書き方、読んできてそんな印象を繰り返してきたのでそのトラウマでしょうか。
私はこの分野への異分野からの参入者(ディレッタントと言うそうです)であり、よくわかっていないためにそんな感じになるものと勝手に解釈してきたのです。
しかし、この『編集バカとバカ編集者』を読んで少しは気分が変わりました。不登校・引きこもり支援等の関する本に手が出ないという私の感覚は「それもあり」ということです。この分野の実践、考え方やそれを書いた本は私の感覚とはかなり違っています。編集者時代もそうでした。いまの引きこもりに関わる時代もまたそうです。

月に5冊以上10冊近くの本を読み散らしています。それだけにいい本を読みたいと思います。読み応えのある本です。つまらないのは易しくしてある解説本、いわゆるハウツーです。書く人の苦心が創造的ではありません。わかりやすいことはありますが、読み応えはありません。
何か新しく道を開くとき、それを文章化するときは苦心します。スムーズでなく妙にゆがみ、わかりづらいところが出てきます。何かをとらえ、表現しようとするときの文章はスムーズでないところがでます。そこにエネルギーが蓄積されているかのような熱を感じます。それは飾るとか見栄えよさを求める余裕のなさによって鮮やかさはなくなりますが、ひきつける力は出てきます。
最近読んだ中でそれにあたるものを1冊紹介しておきます。山口謡司『日本語の奇跡―(アイウエオ>と<いろは>の発明』(新潮社、2007年)。この人の文章はわかりにくくはありませんので誤解なく。二重に優れているといえます。

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