引きこもりのテーマは重い!

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引きこもりからの自立を考えるときの本人の抱える困難が、生後の乳幼児期のものか、思春期の課題の未達成によるものかを見極めたほうがいいのではないか。そんな問題意識をもっている私に1冊の本が紹介されました。
岡本祐子『アイデンティティ生涯発達論の展開』(ミネルヴァ書房、2007年)です。乳児期ないしは幼児期の課題を抱えたままの人はなかなか再起が難しいという点が解明されているので読んでみるといいとのことでした。
確かにその通りですが、私の印象に残ったのは別のことです。
この本は人生の中年期に迎える危機を中心テーマとするものです。その展開過程で、数名の実例をあげ、乳幼児期の課題を持つ人、青年期の課題を持つ人、そして中年期の課題に直面した人を平易に紹介したものです。
数名の実例(発表の性格上いくぶん加工されています)には次の人です。
<事例1> 女、47歳、中学校教師、結婚、子ども2人。
<事例2> 女、46歳、主婦・会社手伝い、結婚、子ども2人。
<事例3> 女、55歳、主婦・音楽教室経営、結婚、子ども3人。
<事例4> 男、44歳、会社員、結婚、子ども2人。
<事例5> 男、44歳、医師、結婚、子ども2人。
<事例6> 女、49歳、主婦・パート勤務、結婚、子ども?
<事例7> 女、40歳、専業主婦、結婚、子ども?

著者はこのうち<事例1>から<事例3>の人をAレベル、<事例4><事例5>をBレベル、<事例6><事例7>をCレベルとしています。
Aレベルとは「中年期までは適応的な人生を歩んできたが、…中年期の自己に関わる内圧と外圧によって心身の不調をきたし、心理療法に来談された人々である」(69ページ)。
Bレベルとは「青年期または成人初期までの心理社会的課題が未解決のまま中年期を迎えてしまった事例…中年期の危機は、もはや課題の先送りが許されない、にっちもさっちもいかない状況で表れているため、心理療法では、本腰を入れてこれまでの未解決の課題や意識されていない葛藤の見直しを行う必要がある」(74ページ)ものです。
Cレベルとは「葛藤の根が乳幼児期に由来する事例の中年期の問題」(83ページ)であり、<事例7>は「中年期危機の事例と考えるのは、少し的が外れている。…乳幼児期の深い家族病理の体験が、その後の人生にどのような影響を与えるかを考察する上で、重要な事例である」(86ページ)としている。

この本は中年期の危機を主に扱ったものですから、青年期の引きこもりが高年齢化しているものとは基本的に違うといえばそれまででしょう。それでも私には信じられないほどの“快活”な事例です。30代から40代にかけての引きこもりの経験者をもしレベルで見ようとするならば、Dレベルとすることも一般的には困難です。
職業に就く就かないところで問題が生まれます。結婚する・結婚しないのところでも躊躇があります。子どもを持つことでもまた何かがあります。しかし、職についた人はいますし、結婚した人もいますし、子どもを持つ人もいます。そういうのは目指したいけども大多数には現実的とはいえない浮いた目標です。要するに、私が直面している引きこもりの人の状態はこれらよりはるかに深くて重い問題であることを思い知らされたのです。

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